_,-一ｰ- ,_
　　　　　 　　'´　　,＿__＿ ｀★､
　　　　　／　 ./ﾌ´,r--､`､｀`'ヽ､`､
　　　　/　　　.}i 　{;;;;;;;;;;} .}::::::::r´`､i
　　　/　　　　,!{　 ゝ;__ノ ,ﾉ:::::::{ r^ヽ}
　　/　　　　 i::::ﾞﾐ､_＿_,,ノ::::::::::! !;;;;} !
　/　　　　　,!:::::::::::::::::::::::::::::::::::`､`´ﾉ`､
./　　　　　,!::::::::::::::::::::::_＿:::::::::::::`´!　 i　　「鉄と銭が関係した、軽い一揆のお話」後編を始めたいと思うであります。
{　　　　　ﾒ-一ｰ-ｰ'T´　　 `>､:::::;ﾉ　　|
`､　　　ノ　`>､,　　　`ｰ--'´ _,,>1　　　|
　 `-''´,r'￣;r'/`ー-､_＿,,-'´ _ノ　＿,
　　　 /::::::/ /　＿_ノヽ_`ﾄ=ﾆ-一''´
　 　 ,1::::::ヽL､　`､　　　ゝ､
　　〈::::!::::::::::::;_)　/__　 i´|::::`､
　　 `､`ゝ;_::::丿 '´　｀V ﾑ:::::::`-､
　　　 `､:::::｀´i　 　 　　'´ `､::::::::::ヾ}

.

　　　　　　　　　　　 ,,　-───‐‐-　,,
　　　　　　　　 , .＜　　　　　　　　　　　 ＞ 、
　　　　　　,　"　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼
　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　＼
　　　, '　　　　　　　　　　　　　 　 　 ★　　　　　　ヽ
.　　/　　　　　　　　_＿＿＿＿＿＿＿＿＿__　 　 ∧
　 /　　 　 　 .´￣　´￣￣｀　、　　 　 　 　 . ´￣｀寸 ',
. /　　　　　　l ／　　　　　　　 ヽ: : : : : : : :/　　　　 ヽ V
/　　　　　　 l/　　　　　　　　　　 :.:.:.:.:.:.:.:.:′　　　　　} .V
　　　　　 　 |{ 〔三三三三三三} }::::::::::::::::{ {三三三〕 |', .V　　 ./｢ヽ., ＜ ￣　＞､
　　　　　　　|　 　 ￣￣￣￣ 　 ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　￣￣　　' }　.V　_/==, ': : : : : : : : : : ::ヽ
　　　　　 　 |　 ,　　　　　　　　/ : : : : : : : :ﾍ　　　　,ｲ-‐=.T"　|　/: : : : : : : : : : : : : ∧
　　 　 　 　 | 　 `　 .,,_＿__ .ィ 　 　 　 　 ∧_.≧= '": : : : : |　　|: {: : : : : : : : : : : : : : : :}
　　　　　　 .}　　　　　　　　　　　　　　／￣:|: : : : : : :_:_: : =:‐ ─:V : : : : : : : : : : : : : ﾘ
　　　　　　 }　　　　　　　　　　　　　　{l : : : :|:_: :-: イ:,-､:,‐､ : | : : ' ,: : : : : : : : : : : :., '
　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　{l {二ﾆ! : : : : | :|: :||: :| : | : : : :`＜: : : : : :_＞´　　　　・・・・・・さて、であります。
　　　　　　,'＼　　　　　　　　 　 　 　 {l: : : : |: : : : : | :|: :||: :| : L＿＿＿二!￣
　　　　　 /　　＼　　　　 _ ,..　-‐=ｴｴ{l: : : : |:_: ---ゝゝ_ゝ-`ー─ｯ--‐'
.ー── '　　　　 "'' ,＜　　　　_ ,,　 -ヾ_､ .__二_ |}: :}|二二 }￣￣
　　　 　 　 　 　 　 /　　 ￣￣ "''　‐-　／　 __〉/V/}|￣￣}
　　　　　　　　　　/　　 "',.､　　　　　　　　　ゝ-,‐ |} }|: : : : |
　　　 　 　 　 　 /　　　 /　 ＞ ..,,　　　　　　二} . |} }|: : : : |
　　 　 　 　 　 ./　　　 / 　 ___/　 `ｰ───‐.'.　.|} }|: : : : |
　　　 　 　 　 /　　　 /　　 ＼　　 ／ 　 :|V ;;;;;|　 |} }|: : : : |
　　 　 　 　 ./　　 　 {　　　 / .≠∧　　 ﾘ }￣ |　 |} }|: : : : |
　　 　 　 　 {　　　　 乂　　^´　　 ｀^　／ ﾘ 　 |　 `ｰ'──'

.

　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
　　　　　　　　／★-''",~''"￣`ヽ、　 ＼
　　　　　　 ／／: : : :/-ー:､ : : : ヾ､
　　　　 　 //⌒ゝ: : : :i: : : : : `ー-}: :ヽ
　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ　　　　皆様、前回の大迫銭座終焉の顛末を読んで、どう思ったでありますか？
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l　　　　無知で迷信深い農民が、愚かにもせっかくの産業を消してしまった。
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl　　　　そう思った、方もいらっしゃるのではありませんかな？
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／
: : : : : : : : : :ー-=-' ＿＼　　　l /‐ヘ
―‐-- : :＿: : : : : : : : :￣ヽ_-'ノ
　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ



　　 i　 　 　 　 ＿__,__......,:::-ー ´ .、 .,　i 　__彡' Vi
　　 l　　　　　 ヽ　 ／￣　｀ ヽ　　ﾉ　ヽ{,,彡´　　 ｌ∧　　　ですが、実際はそんな単純な話ではないかもしれないでありますぞ？
　　 |　　　　 　 |. /　　　　 ＿∧ 　 　　ﾍ　　 　 /|　ヽ
　　 |　　　　 　 | {＿＝彡=￣　｝　　　 　 `ﾐｰ '　 | 　 |　　これから先の話は一つの説であります。そこは注意であります。
　　ﾉ　　　　　　| ヽ￣　　　　 ノ,　　　　　　　　 　} 　　ｒ
　　　　　　　　　|　 `.ｰ- - 彡'　　　　　　　　　　/　　　i　この説には、迷信を信じる素朴で愚かな農民はほとんど存在せず、
　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　 　 丿
　　　　　　　　　|　　 　 　 　 　 , ｨ T T lﾌ`ｰ／　　 ／　　困窮した、だが強かな民衆がいるであります。
　　　　　　　　　ト ,　　　　,,,／. ー┴┘´イ`　ー　'
　　＼　 　 　 　.|　　` ｰ ≦--- ― .< ´

.

　　　　　　　　　　　　_,,..　―　,,
　　　　　　　　 ,..-''″　　★　　 ﾞヘ､
　　　　　　 ,,-,ﾞ -;;;;;;￢''''''''''￢―-..,,,,＼
　　　　 　 //ﾝ'シ'‐､.`'i:::::::::::::::./ 二ﾐ' ｌ'Λ
　　　　　/i./ /illllllllllll　|::::::::::::/ .lllllllllll!ﾞl, ｌ.ｌ
　　　　 / ! ! .ｌlllllllllll/ / :::::::::.ｌヽ!llllll!!丿,!.| l
　　　　 !│ ヽ,.゛＿／::::::::::::::: .＼_｀゛._./ .| .|
　　　　ｌ　ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: !　|
　　　 .|　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / 　.ｌ　　まず、この大迫銭座終焉の顛末には、2つ重要な点があるであります。
　　　 .!　　 ヽ .＿_,,.../ ''''''‐､　　:::::::::::/ 　　 ﾞl
　　　 .|.　　　｀'-,,.　　`ｰｰ'''" ｀''ｰ-.／　　　　|
　　　　 ﾞ''ｰ- -ｰ'ﾞ.ﾞ＞ｯ､､､､､､ -イ″ﾞ'ｰ--ｰ'"
　　＿、　　　.,／ﾞ., /　,,,　　　 ヽ...＼
　 /　　 ´ﾞ"''゛ .,／./　＿ノヽ_..　||＼.＼
　　.￣"''''―‐" 　/　`､ 　　　ゝ.|.|　＼　!
　　　　　　　　 　/　　/__　 .「　 .|.| .／　ﾉ
　　　　　　　　　｛　　'´　｀V　　 .|..|　／

.

　　　　　　　　　, ,.....,, _
　　　 　＿,,,.r´-‐=‐≡､ヽ,
　　　ｒ´, イ~,） ● ｝　 .r ''ヾ､
　　 ／ ,r''i"..ゝ-‐"　｛　● ｝i、 　　　一つは発生時期であります。
　　 ヽ、＼! ﾞﾞ"　　　　`‐- ' ,! ヽ、
　 　 　 ＼ ＼, ...,,,__ 　　ﾞ"ﾞﾝ 　　）　　1869年を和暦に直しますと、明治2年であります。・
　 　 　 　 ｀ヽ,ﾐ''| l |.≧､イ,＿_／
　　　　 　 　/,'__ゝ<:.＼　　　　　　　　これ、実は絶妙なタイミングなのであります。
　　　　　　 ｛ ',〉,.､〈ﾉ｝､＼_,、
　　　　　　　ヽ':;;;;:'ﾞノ　 ＼_,ﾉ
　　　 　 　 　 |｜/
　　　　　　　　i | |
　　　　　　　　UU



　　　　　　　 _,,. -ー-- ..、
　　　　　 ,.::'-- ､-- ★.　 ヽ、
　　　, -''/;' r:::,　lｰ-､, ＝､　ヽ　 , - ､　　　　　前年の明治元年、東北では奥羽越列藩同盟が新政府軍と交戦。
　　/　 /~ヽ`"_ノ　 ;' γヽ }ヽ l /　　 ）
　　l　　!　　￣　　　､ `ｰ'' ﾉ　l lノ!_.ノrっ-､　　敗北を喫して、同盟が瓦解しているであります。
　　ヽ　 !　　　　　　　`'''''"ヽ l　l　Lブ├'~
　　　 `（ヽ　 `i入_,　　　　 .l/　 l　'__.ノ
　　　　 〉　ﾄ､ し' ,.. - ､_,.ノ~　／‐'~
　　　　/ ノ-''"`/　 r''/ー―'"
　　　　`'''"　　 l　ノ‐'
　　　　　　　　　`"
.

　　　　　　　　　　　　　　　 _,,.. ---　､
　　　　　　　　　　　　 ,. -''"　　　　　　 `丶、
　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　/、　　　　　　 u　　　　し　　ヽ
　　　　　　　　　/､｢　　　　　　　　　　　　　　　 ,｝
　　　　　　　　　l::::,＝､ー‐┐ぅ　　　　　　　 r''":::l!
　　　　 　 　 　 l::/:::::::::ヽ::::l　　　　　　　　　 lι::::ｌｌ
　　　　　　　　　l:ト-:､::::::ｌ:::|　　　　u　　　　　l:::::::ｌ｜　　　　　　この敗戦の結果、盛岡藩は藩主が交代になり、
　　　　　 　 　 　lヽ:::::ヽ､!::l　　　　　　　　　　 l::::/　l　　／
　　　　　　　　　 ヽ:`ー' ιl　　　　　 ぅ　　　　V　 ﾉ ／　　　　しかも減封の上で転封。
　　　　　　　　　　 ヽ:::::::::::::l　　　　　　　　　　　}‐'　 |￣￣
　　　　　　, -ー‐''''''"ヽ7ヽ､!　　　　　　　　　／ 　 　|＿＿　　政治の中核だった家老が刎首されることとなっていたであります。
　　　r-- {-y ＿,,.. --ー＝=ヽ､＿＿_,,,...-''"ー-- ､
　　/に　 Qし'"　　　　　　　/::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
　 ﾑ二_　　　　 ＿＿　　　/:::::/ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::l
　　　　　ロﾗ　 ム\並}　 /::::::/[]　＼::::::::::::::::::::::::::/
　　tj　｢l　　rl]　　Lｌｌ」　/:::::::/　　　　ヽ､::::::::::::::／
　　　 /ｌｌヽ / Ll!　 "　 /::::::::/ ＝　　　/:::::::::;r'"く、　　_
　　　{ 「 l}　V､_ゝ　, -'::::::::::/　　　　 /:::::::∠ﾆ=--､￣::::l、
　　　 チｲ　　　　　{＿＿ノ　　　　　{、＿＿,,,.. - ､_つー'
　　　 ￣　　　ェ}

.

　　　　　　　 __......._
　　　　　, '´　.:☆::　 ｀ヽ,
　　　　/_.._... -―- ..___　',
　　　/'´ 　 ヽ,:::::: , '´　｀' '、
　　/i ⊂ニ⊃i::::::i⊂ニ⊃.i,　　　つまり、盛岡藩、一揆のときには盛岡県でありますが、内政は大混乱だったであります。
　./ .i' ､　　 ノ:::::::'､　　　 ,ﾊ
./　　'､　￣:::::::::::::: ｀ー ''/　',　　県知事は4月に任命されたばかりでありますし、二戸、三戸、九戸郡では
!　　　 `､-―<⌒>､..__／. 　 ',
` ､__..ノ´｀>ー---r‐i´'､　　　i　 2月に治安維持をしていた弘前藩の支配への反対運動が起こって、
　　　　 （_'二ﾆつ' _ﾉ!　`ｰ- '
　　　　　', '､ ☆￣ﾉ ,'　　　　　 担当が交代する騒ぎまで発生していたであります。
　　　　　 ﾄ､`ｰ- ' ノ!
　 　 　 　 ! ｀/￣､　',
　　　　　 ﾉ　i 　　 '､ '､
　　　　　'-‐'　　　　`ｰ'



　　　　/''"~⌒~"''''ヽ
　　　 ﾉ___,,,,★,,,,____ `､
　　　/l:(●)::::::(●)::l　ヽ
　 .／ |;;:::;,ｨＴTｪ､;:::;;|　　＼　　ついでに言うなら、盛岡藩家老「楢山　佐渡」の刎首が6月23日！
　〈　　〉､__` 亠"__ノ､_＿ノ
　 ｀ヽ' ,.ｲ _/ヽ_　ヽ;;;;::::)　　　　まあ、これに関してはおそらく偶然でありますが、
　　　 (;:（ >_,､く　ﾉ::::）
　　　　~ `ｰ/::,くｰ'''"　　　　　　なんとも絶妙なタイミングではありますな。
　　　　　　/::/ヽ;＼
　 　 　　 〈／ 　 ＼）

　　　　　　　 __......._
　　　　　, '´　.:☆::　 ｀ヽ,
　　　　/_.._... -―- ..___　',
　　　/'´ 　 ヽ,:::::: , '´　｀' '、
　　/i ⊂ニ⊃i::::::i⊂ニ⊃.i,　　　ついで重要なのは、農民たちの要求であります。
　./ .i' ､　　 ノ:::::::'､　　　 ,ﾊ
./　　'､　￣:::::::::::::: ｀ー ''/　',
!　　　 `､-―<⌒>､..__／. 　 ',
` ､__..ノ´｀>ー---r‐i´'､　　　i
　　　　 （_'二ﾆつ' _ﾉ!　`ｰ- '
　　　　　', '､ ☆￣ﾉ ,'
　　　　　 ﾄ､`ｰ- ' ノ!
　 　 　 　 ! ｀/￣､　',
　　　　　 ﾉ　i 　　 '､ '､
　　　　　'-‐'　　　　`ｰ'



　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
　　　　　　　　／★-''",~''"￣`ヽ、　 ＼
　　　　　　 ／／: : : :/-ー:､ : : : ヾ､
　　　　 　 //⌒ゝ: : : :i: : : : : `ー-}: :ヽ
　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ　　銭座の関連の資料は、保管してた寺の火事の影響であまり残ってないであります。
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l　　が、吾輩が調べた範囲だと、農民の要求は「米をよこせ」であります。
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl　　　これって、一揆の表向きの発生理由から考えると、ちょっとへんであります。
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／
: : : : : : : : : :ー-=-' ＿＼　　　l /‐ヘ
―‐-- : :＿: : : : : : : : :￣ヽ_-'ノ
　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ

.

　　　 　 　 /|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　 　 　 / ｜　　　　　　　　　　　　　　|
　 　 　 /　　|　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |
　　 　/　 　 |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　 /　　 ／ 　 _, -─‐　- 、　　　　／
　　 |　 ／　／　＿..　-┸-､ヽ　　／
　　 |／　/　 ／　　 ＼::::::::::/⌒ヽ　　　　天候不順の原因は銭座。
　　 ￣７　　 |━━━-!........|-━ |
　　　 /　　　|、　　　 ノ..........､　　|､　　　農民がこれを信じていたなら、まず第一に銭座の操業停止が要求に
　　 /　　　　|....ι............................./｜
　　 l　　　　i、...........u.....＿_.......ノ　ﾉ　　　なるはずなのであります。
　 　 ｀ー- ′｀ｰ- 　 ⌒ー'｀ｰ'- '′



　　　　　　　　　 　 。s≦ ￣￣　≧s。
　　　　　　 　 　 ／ 　　　　　　　　☆ ｀　､
　　　　　　　 .　´　　　 ＿　 -:―:― s。 _　ヽ
　　　　　　 .:'　　　iア´　　　｀　､＼,: : : ／｀ヽ}
　 　 　 　 /　　　 j!　　,:≦ﾊ　　! : : : : ' 　,x､ ‘,
　　　　　/　 　 　 j!　 弋::::ノ 　 ;: : : : :!　 !::::}　!∨
　　　　 ,'　　　 　 j!ヽ　　 　 　ノ: : : : : ヽ　-'　ﾉ! ∨　ですが、彼らの要求は米であります。
　　　　,'　　　　　 j!.: :`:ー: : ´: : : : : : : : :.ー ´:八 !
　　 　 |　　　　　 ,':.: :. : :. :. .: : : : : : : : : : :.: :./' 　 |　　実はでありますな、銭座に農民が米を要求するのは、
　　　　ヽ　　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : :／　　　|
　　　 　 ≧s。ノ ≧s。: :_:,　イ´¨アヽ:_ イ ＿＿ ノ　　これが初めてではないのであります。
　　　　　　　　　　／: : :＞x-ゝイ≦　 _r- .､
　　　　　　　　 ／: : ィ/ : : 'Yヽ ﾏ,:＼‘{ : : : }
　　　　　　　 ,:' x≦ : : : : : ﾉ　 ＞}!: : Y: : : /
　　　　　　　 ゝ r― = ≦7　　 {　}!≧s。 /

.

　　　　　　　　　　　　_,,..　―　,,
　　　　　　　　 ,..-''″　　★　　 ﾞヘ､
　　　　　　 ,,-,ﾞ -;;;;;;￢''''''''''￢―-..,,,,＼
　　　　 　 //ﾝ'シ'‐､.`'i:::::::::::::::./ 二ﾐ' ｌ'Λ
　　　　　/i./ /illllllllllll　|::::::::::::/ .lllllllllll!ﾞl, ｌ.ｌ
　　　　 / ! ! .ｌlllllllllll/ / :::::::::.ｌヽ!llllll!!丿,!.| l　　　農民たちは銭座に複数回、「援助」を要求していたようなんであります。
　　　　 !│ ヽ,.゛＿／::::::::::::::: .＼_｀゛._./ .| .|
　　　　ｌ　ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: !　|　　そして、銭座はこの要求を飲んでいたであります。
　　　 .|　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / 　.ｌ
　　　 .!　　 ヽ .＿_,,.../ ''''''‐､　　:::::::::::/ 　　 ﾞl　銭座の操業に必要な物資、鉄や木炭は、どうしたって農民の協力がないと
　　　 .|.　　　｀'-,,.　　`ｰｰ'''" ｀''ｰ-.／　　　　|
　　　　 ﾞ''ｰ- -ｰ'ﾞ.ﾞ＞ｯ､､､､､､ -イ″ﾞ'ｰ--ｰ'"　運び込めないでありますからな。
　　＿、　　　.,／ﾞ., /　,,,　　　 ヽ...＼
　 /　　 ´ﾞ"''゛ .,／./　＿ノヽ_..　||＼.＼　　　　銭座の労働者にも少なくない農民出身者が居たでありましょうし。
　　.￣"''''―‐" 　/　`､ 　　　ゝ.|.|　＼　!
　　　　　　　　 　/　　/__　 .「　 .|.| .／　ﾉ
　　　　　　　　　｛　　'´　｀V　　 .|..|　／




　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
　　　　　　　　／★-''",~''"￣`ヽ、　 ＼
　　　　　　 ／／: : : :/-ー:､ : : : ヾ､
　　　　 　 //⌒ゝ: : : :i: : : : : `ー-}: :ヽ
　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ　　つまり農民たちの行動って、「タ　カ　リ」なんでありますよ。
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l　　理由も徹頭徹尾、金の問題であります。
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl　　　しかも、時勢を読みお上の取締がゆるいタイミングを狙ってるであります。
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／
: : : : : : : : : :ー-=-' ＿＼　　　l /‐ヘ　　　　迷信染みた噂は、ただの動員の口実でありましょうな。
―‐-- : :＿: : : : : : : : :￣ヽ_-'ノ
　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ

.

　　　　　　　 _,,. -ー-- ..、
　　　　　 ,.::'-- ､-- ★.　 ヽ、　　　　　　　農民たちがタカリまがいの行動を行ったのには、実は理由があるであります。
　　　, -''/;' r:::,　lｰ-､, ＝､　ヽ　 , - ､
　　/　 /~ヽ`"_ノ　 ;' γヽ }ヽ l /　　 ）　　 大迫近辺は銭座の経営が軌道に乗って以降、急速なインフレが
　　l　　!　　￣　　　､ `ｰ'' ﾉ　l lノ!_.ノrっ-､
　　ヽ　 !　　　　　　　`'''''"ヽ l　l　Lブ├'~　発生していたそうであります。
　　　 `（ヽ　 `i入_,　　　　 .l/　 l　'__.ノ
　　　　 〉　ﾄ､ し' ,.. - ､_,.ノ~　／‐'~
　　　　/ ノ-''"`/　 r''/ー―'"
　　　　`'''"　　 l　ノ‐'
　　　　　　　　　`"




　　　　　　　　　, ,.....,, _
　　　 　＿,,,.r´-‐=‐≡､ヽ,
　　　ｒ´, イ~,） ● ｝　 .r ''ヾ､
　　 ／ ,r''i"..ゝ-‐"　｛　● ｝i、 　　実際のところ、盛岡藩は慢性的にインフレであります。
　　 ヽ、＼! ﾞﾞ"　　　　`‐- ' ,! ヽ、
　 　 　 ＼ ＼, ...,,,__ 　　ﾞ"ﾞﾝ 　　）　まず、生産効率に見合わない高い年貢と広範な専売制の影響で、
　 　 　 　 ｀ヽ,ﾐ''| l |.≧､イ,＿_／
　　　　 　 　/,'__ゝ<:.＼　　　　　　　物資がずっと不足していたであります。
　　　　　　 ｛ ',〉,.､〈ﾉ｝､＼_,、
　　　　　　　ヽ':;;;;:'ﾞノ　 ＼_,ﾉ
　　　 　 　 　 |｜/
　　　　　　　　i | |
　　　　　　　　UU

.

　　　 　 　 /|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　 　 　 / ｜　　　　　　　　　　　　　　|
　 　 　 /　　|　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |
　　 　/　 　 |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　 /　　 ／ 　 _, -─‐　- 、　　　　／　　　でも、貨幣は供給され続けていたであります。
　　 |　 ／　／　＿..　-┸-､ヽ　　／
　　 |／　/　 ／　　 ＼::::::::::/⌒ヽ　　　　　　農民が死なないために密造した贋金や、財政難の藩が乱発した藩札。
　　 ￣７　　 |━━━-!........|-━ |
　　　 /　　　|、　　　 ノ..........､　　|､　　　　　これらがずーっと供給され続けていたであります。
　　　/　　　 |....ｰ-....´..................ｰ' | |
　　 /　　　　|....ι............................./｜
　　 l　　　　i、...........u.....＿_.......ノ　ﾉ
　 　 ｀ー- ′｀ｰ- 　 ⌒ー'｀ｰ'- '′




　　　　　　　　　 　 。s≦ ￣￣　≧s。
　　　　　　 　 　 ／ 　　　　　　　　☆ ｀　､
　　　　　　　 .　´　　　 ＿　 -:―:― s。 _　ヽ
　　　　　　 .:'　　　iア´　　　｀　､＼,: : : ／｀ヽ}
　 　 　 　 /　　　 j!　　,:≦ﾊ　　! : : : : ' 　,x､ ‘,　　　　結果が慢性的なインフレでありますよ。
　　　　　/　 　 　 j!　 弋::::ノ 　 ;: : : : :!　 !::::}　!∨
　　　　 ,'　　　 　 j!ヽ　　 　 　ノ: : : : : ヽ　-'　ﾉ! ∨　　さて、大迫銭座では大量の正貨が鋳造されいたであります。
　　　　,'　　　　　 j!.: :`:ー: : ´: : : : : : : : :.ー ´:八 !
　　 　 |　　　　　 ,':.: :. : :. :. .: : : : : : : : : : :.: :./' 　 |　　これらは基本的には江戸や大阪の市場に流されるわけでありますが、
　　　　ヽ　　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : :／　　　|
　　　 　 ≧s。ノ ≧s。: :_:,　イ´¨アヽ:_ イ ＿＿ ノ　　一部は藩に税として収められたり、労働者の給与にもなったであります。
　　　　　　　　　　／: : :＞x-ゝイ≦　 _r- .､
　　　　　　　　 ／: : ィ/ : : 'Yヽ ﾏ,:＼‘{ : : : }　　　　　もちろん、藩は領内での支払いにこの銭を使うであります。
　　　　　　　 ,:' x≦ : : : : : ﾉ　 ＞}!: : Y: : : /
　　　　　　　 ゝ r― = ≦7　　 {　}!≧s。 /

.

　　　　/''"~⌒~"''''ヽ
　　　 ﾉ___,,,,★,,,,____ `､
　　　/l:(●)::::::(●)::l　ヽ
　 .／ |;;:::;,ｨＴTｪ､;:::;;|　　＼　　つまり、物資不足で流通する貨幣の信用が低い地域に、そこそこ信用のある貨幣が、
　〈　　〉､__` 亠"__ノ､_＿ノ
　 ｀ヽ' ,.ｲ _/ヽ_　ヽ;;;;::::)　　　「比較的大量に」流れ込んだわけなんであります。
　　　 (;:（ >_,､く　ﾉ::::）
　　　　~ `ｰ/::,くｰ'''"　　　　　その結果何が起こるか？
　　　　　　/::/ヽ;＼
　 　 　　 〈／ 　 ＼）




　　　　　　　 __......._
　　　　　, '´　.:☆::　 ｀ヽ,
　　　　/_.._... -―- ..___　',
　　　/'´ 　 ヽ,:::::: , '´　｀' '、
　　/i ⊂ニ⊃i::::::i⊂ニ⊃.i,
　./ .i' ､　　 ノ:::::::'､　　　 ,ﾊ
./　　'､　￣:::::::::::::: ｀ー ''/　',　　　インフレの急激な進展と、信用の低い貨幣の暴落であります。
!　　　 `､-―<⌒>､..__／. 　 ',
` ､__..ノ´｀>ー---r‐i´'､　　　i
　　　　 （_'二ﾆつ' _ﾉ!　`ｰ- '
　　　　　', '､ ☆￣ﾉ ,'
　　　　　 ﾄ､`ｰ- ' ノ!
　 　 　 　 ! ｀/￣､　',
　　　　　 ﾉ　i 　　 '､ '､
　　　　　'-‐'　　　　`ｰ'

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　　　　　　　　　　　　_,,..　―　,,
　　　　　　　　 ,..-''″　　★　　 ﾞヘ､
　　　　　　 ,,-,ﾞ -;;;;;;￢''''''''''￢―-..,,,,＼
　　　　 　 //ﾝ'シ'‐､.`'i:::::::::::::::./ 二ﾐ' ｌ'Λ
　　　　　/i./ /illllllllllll　|::::::::::::/ .lllllllllll!ﾞl, ｌ.ｌ
　　　　 / ! ! .ｌlllllllllll/ / :::::::::.ｌヽ!llllll!!丿,!.| l　　　　農民が手に入れやすい貨幣は、密造した贋金であります。
　　　　 !│ ヽ,.゛＿／::::::::::::::: .＼_｀゛._./ .| .|
　　　　ｌ　ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: !　|　　　ところがその銭は銭座開設以降、急激に価値を落とし、資産価値が激減。
　　　 .|　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / 　.ｌ
　　　 .!　　 ヽ .＿_,,.../ ''''''‐､　　:::::::::::/ 　　 ﾞl　　逆に物価は急激に上がっているわけであります。
　　　 .|.　　　｀'-,,.　　`ｰｰ'''" ｀''ｰ-.／　　　　|
　　　　 ﾞ''ｰ- -ｰ'ﾞ.ﾞ＞ｯ､､､､､､ -イ″ﾞ'ｰ--ｰ'"　　おそらくは小規模な貨幣の密造では追いつかなかったでありましょうな。
　　＿、　　　.,／ﾞ., /　,,,　　　 ヽ...＼
　 /　　 ´ﾞ"''゛ .,／./　＿ノヽ_..　||＼.＼
　　.￣"''''―‐" 　/　`､ 　　　ゝ.|.|　＼　!
　　　　　　　　 　/　　/__　 .「　 .|.| .／　ﾉ
　　　　　　　　　｛　　'´　｀V　　 .|..|　／

.

　　　　　　　　　_,-一ｰ- ,_
　　　　　 　　'´　　,＿__＿ ｀★､
　　　　　／　 ./ﾌ´,r--､`､｀`'ヽ､`､
　　　　/　　　.}i 　{;;;;;;;;;;} .}::::::::r´`､i
　　　/　　　　,!{　 ゝ;__ノ ,ﾉ:::::::{ r^ヽ}
　　/　　　　 i::::ﾞﾐ､_＿_,,ノ::::::::::! !;;;;} !　　　　その上、明治2年の天候不順であります。
　/　　　　　,!:::::::::::::::::::::::::::::::::::`､`´ﾉ`､
./　　　　　,!::::::::::::::::::::::_＿:::::::::::::`´!　 i　　　米価は暴騰し、これまでのように贋金で乗り切るのも難しい・・・・・・。
{　　　　　ﾒ-一ｰ-ｰ'T´　　 `>､:::::;ﾉ　　|
`､　　　ノ　`>､,　　　`ｰ--'´ _,,>1　　　|
　 `-''´,r'￣;r'/`ー-､_＿,,-'´ _ノ　＿,
　　　 /::::::/ /　＿_ノヽ_`ﾄ=ﾆ-一''´
　 　 ,1::::::ヽL､　`､　　　ゝ､
　　〈::::!::::::::::::;_)　/__　 i´|::::`､
　　 `､`ゝ;_::::丿 '´　｀V ﾑ:::::::`-､
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　　　　 　 //ﾝ'シ'‐､.`'i:::::::::::::::./ 二ﾐ' ｌ'Λ
　　　　　/i./ /illllllllllll　|::::::::::::/ .lllllllllll!ﾞl, ｌ.ｌ
　　　　 / ! ! .ｌlllllllllll/ / :::::::::.ｌヽ!llllll!!丿,!.| l
　　　　 !│ ヽ,.゛＿／::::::::::::::: .＼_｀゛._./ .| .|　　　銭座へのタカリは、そういう農民の苦肉の策だった、と考えられるのであります。
　　　　ｌ　ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: !　|
　　　 .|　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / 　.ｌ　　　銭座に米とか金があるのは、まあ、簡単に想像できるでありますしな。
　　　 .!　　 ヽ .＿_,,.../ ''''''‐､　　:::::::::::/ 　　 ﾞl
　　　 .|.　　　｀'-,,.　　`ｰｰ'''" ｀''ｰ-.／　　　　|　　銭座もそのへんわかっていたから、多少は要求に応じたであります。
　　　　 ﾞ''ｰ- -ｰ'ﾞ.ﾞ＞ｯ､､､､､､ -イ″ﾞ'ｰ--ｰ'"
　　＿、　　　.,／ﾞ., /　,,,　　　 ヽ...＼　　　　　　　ところが、農民の困窮は酷く、援助要求の回数が多すぎたであります。
　 /　　 ´ﾞ"''゛ .,／./　＿ノヽ_..　||＼.＼
　　.￣"''''―‐" 　/　`､ 　　　ゝ.|.|　＼　!
　　　　　　　　 　/　　/__　 .「　 .|.| .／　ﾉ
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　　　　　　　 _,,. -ー-- ..、
　　　　　 ,.::'-- ､-- ★.　 ヽ、
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　　/　 /~ヽ`"_ノ　 ;' γヽ }ヽ l /　　 ）　　　銭座といえど、流石に際限なく米なり金なり渡してはいられないであります。
　　l　　!　　￣　　　､ `ｰ'' ﾉ　l lノ!_.ノrっ-､
　　ヽ　 !　　　　　　　`'''''"ヽ l　l　Lブ├'~　で、話がこじれて農民側は示威行動に出る。
　　　 `（ヽ　 `i入_,　　　　 .l/　 l　'__.ノ
　　　　 〉　ﾄ､ し' ,.. - ､_,.ノ~　／‐'~　　　　それが大迫銭座焼き討ちの内幕、だと思われるであります。
　　　　/ ノ-''"`/　 r''/ー―'"
　　　　`'''"　　 l　ノ‐'
　　　　　　　　　`"



　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
　　　　　　　　／★-''",~''"￣`ヽ、　 ＼
　　　　　　 ／／: : : :/-ー:､ : : : ヾ､
　　　　 　 //⌒ゝ: : : :i: : : : : `ー-}: :ヽ　　　　ま、それで失火して銭座が燃えちゃたわけなんで、若干間は抜けているでありますが！
　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ　　その辺は、愛嬌愛嬌！
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/　　この騒ぎは流石に話が大きくなりすぎたらしく、農民もいくらか処罰されたみたいであります。
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／　　　以上が大迫銭座焼き討ち一揆の原因、その一つの説でありますよ。
: : : : : : : : : :ー-=-' ＿＼　　　l /‐ヘ
―‐-- : :＿: : : : : : : : :￣ヽ_-'ノ
　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ

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　　　　　　　　　　　　_,,..　―　,,
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　　　　 　 //ﾝ'シ'‐､.`'i:::::::::::::::./ 二ﾐ' ｌ'Λ
　　　　　/i./ /illllllllllll　|::::::::::::/ .lllllllllll!ﾞl, ｌ.ｌ
　　　　 / ! ! .ｌlllllllllll/ / :::::::::.ｌヽ!llllll!!丿,!.| l　　　この後、大迫銭座の燃え残った設備や人員は釜石の橋野の銭座に移され、
　　　　 !│ ヽ,.゛＿／::::::::::::::: .＼_｀゛._./ .| .|
　　　　ｌ　ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: !　|　　そこで再出発したであります。
　　　 .|　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / 　.ｌ
　　　 .!　　 ヽ .＿_,,.../ ''''''‐､　　:::::::::::/ 　　 ﾞl　橋野銭座は溶鉱炉付きの、大迫銭座より大規模な銭座で、その生産は
　　　 .|.　　　｀'-,,.　　`ｰｰ'''" ｀''ｰ-.／　　　　|
　　　　 ﾞ''ｰ- -ｰ'ﾞ.ﾞ＞ｯ､､､､､､ -イ″ﾞ'ｰ--ｰ'"　順調だったであります、が。
　　＿、　　　.,／ﾞ., /　,,,　　　 ヽ...＼
　 /　　 ´ﾞ"''゛ .,／./　＿ノヽ_..　||＼.＼
　　.￣"''''―‐" 　/　`､ 　　　ゝ.|.|　＼　!
　　　　　　　　 　/　　/__　 .「　 .|.| .／　ﾉ
　　　　　　　　　｛　　'´　｀V　　 .|..|　／



　　　 　 　 /|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
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　　 /　　 ／ 　 _, -─‐　- 、　　　　／
　　 |　 ／　／　＿..　-┸-､ヽ　　／
　　 |／　/　 ／　　 ＼::::::::::/⌒ヽ
　　 ￣７　　 |━━━-!........|-━ |　　　ところが、直後に新政府から鋳銭禁止令が出るのであります。
　　　 /　　　|、　　　 ノ..........､　　|､
　　　/　　　 |....ｰ-....´..................ｰ' | |　　そのため、しょうがなく橋野銭座は方針を転換。
　　 /　　　　|....ι............................./｜
　　 l　　　　i、...........u.....＿_.......ノ　ﾉ　　昼は鉄製品、夜は銭に密造に励む普通の鉄工所になるであります。
　 　 ｀ー- ′｀ｰ- 　 ⌒ー'｀ｰ'- '′

.

　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
　　　　　　　　／★-''",~''"￣`ヽ、　 ＼
　　　　　　 ／／: : : :/-ー:､ : : : ヾ､
　　　　 　 //⌒ゝ: : : :i: : : : : `ー-}: :ヽ
　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ　　ま、これも1871年には発覚して、橋野高炉の生産が停止させられるんで
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/　　　ありますがな！
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／　　　　この密造騒ぎで銭座は完全に廃止。
: : : : : : : : : :ー-=-' ＿＼　　　l /‐ヘ
―‐-- : :＿: : : : : : : : :￣ヽ_-'ノ　　　　　　　　大迫から続いた流れは本当に終わりを迎えるであります。
　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ




　　　　　　　　　_,-一ｰ- ,_
　　　　　 　　'´　　,＿__＿ ｀★､
　　　　　／　 ./ﾌ´,r--､`､｀`'ヽ､`､
　　　　/　　　.}i 　{;;;;;;;;;;} .}::::::::r´`､i
　　　/　　　　,!{　 ゝ;__ノ ,ﾉ:::::::{ r^ヽ}
　　/　　　　 i::::ﾞﾐ､_＿_,,ノ::::::::::! !;;;;} !　　　　以上が、「鉄と銭が関係した、軽い一揆のお話」であります。
　/　　　　　,!:::::::::::::::::::::::::::::::::::`､`´ﾉ`､
./　　　　　,!::::::::::::::::::::::_＿:::::::::::::`´!　 i　　　え？　何が軽いのかって？
{　　　　　ﾒ-一ｰ-ｰ'T´　　 `>､:::::;ﾉ　　|
`､　　　ノ　`>､,　　　`ｰ--'´ _,,>1　　　|
　 `-''´,r'￣;r'/`ー-､_＿,,-'´ _ノ　＿,
　　　 /::::::/ /　＿_ノヽ_`ﾄ=ﾆ-一''´
　 　 ,1::::::ヽL､　`､　　　ゝ､
　　〈::::!::::::::::::;_)　/__　 i´|::::`､
　　 `､`ゝ;_::::丿 '´　｀V ﾑ:::::::`-､
　　　 `､:::::｀´i　 　 　　'´ `､::::::::::ヾ}

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　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　 _､rf〔ｱ★─=ニｱ7ｧ｡,_
　　　　　　　ｨ(＞''~──-_　＿ ｀` 寸心､
　　　　　 ／⌒ヽ: : : : :／　＿_ ｀ヽ-.､ 寸心、
　　　 ,ｨ７ ,ｲ心　}: : : /　ん////ヽ ヽ:}　 }ﾆﾊ
　　 /iii/ ん'//　': : : {　 {///////}　}|,ｨｱニ入
　　jiii/'{ 乂ｼ　/: : : : ､　乂////ノ　ﾉ|{ii{iiii{iiiiiii}}　　　1000人ぽっちしか参加してない一揆なんて、軽い一揆でありますよ？
　　{/ |{＼__／: : : : : : ＼ 　 ￣　／: |{ii{iiii{iiiiiiii}}
　 /　 l{: : : : : : : : : : : : : :｀￣￣: : : :.|{ii{r､{iiiiiiii}}
　.′　 、: : : : : ＿_.: : : : : : : : : : : : :.ﾚ‐':ﾉ:ﾉ)_iiﾉ
　{{　　　 ､ー‐く　 　｀丶: : : : : : : :／: : : _､‐''　}
　　　　　　＼ 　` ー─''´｀`'～-/: : : : /　　　ﾉ
　　＼＿_,,. . -─=ﾆ　＿＿_,, -/: : : : /＿__／
　　　γ: : : ￣￣｀`ヽ:/ __∧__ { : : ／: ヽ
　──^ー─＼_: :}: }:.}:} ── ｀ー‐''´‐┴─‐
　　　　　　　　　`ｰ^~~~

　　　　　　　　　　, :: ''"￣￣~ `丶 ､
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　　　　　.〃: :/~: l: : : : ＼: : : : : :ノ: : : ヽ
　　　　　 li: :/: : :/: : : : : : :`ー（＿＿）: :lヽ　　以上、長々とお目汚し失礼したであります。
　　　　　 ﾘﾉ: : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　　　／ i￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/　　　今回はここまでであります！
　　　/　　ヽ＿）: : : : :, ｧー---,､＿;: :ﾉl
￣'ー- ＿　ヽ: : : : :人/　　　　l　　 ,／
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　　　ヽ　　￣￣/￣￣￣~ 丁　」ヽ

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以上で投稿は終わりになります。
長々とお目汚し、失礼いたしました。

>>6292
流通する物資量に比べて、貨幣の量が多いからですね。
厳密に言うなら良貨の価値が下がるのではなく、悪貨の相場が下がり物価も上がったのだと思います。